2023年12月、Helpfeelはチャネルトークと「“最小の人数” で、“最大の顧客体験” を実現するCS組織運用術」と題したセミナーを開催した。チャネルトークは顧客とブランドコミュニケーションに特化したBtoB SaaS企業であり、日本・韓国・アメリカを中心に、15万サイト以上で利用されている。
AI時代に「より良い顧客体験」を届けるために、CSが準備すべきことをそれぞれの視点から紹介。後半のディスカッションパートでは「CS領域における、生成AIの影響・活用方法」や「今後のCS働き方・未来」をテーマとし、グローバルの観点を交えながら両社の見解を語り合った。
■登壇者
チャネルトーク日本 CEO Jay氏、営業マネージャー 勝藤 洋平氏
株式会社Helpfeel ビジネスディベロップメント 宮崎 圭太
■目次
- 「最小の人数で、最大の顧客体験を提供する体制」を構築するには?(第1部:Helpfeel)
- 「人がすべきCS」と「AIに任せられるCS」の領域とは?(第2部:チャネルトーク)
- AIと共存する「未来のCS」(第3部:ディスカッション)
「最小の人数で、最大の顧客体験を提供する体制」を構築するには?(第1部:Helpfeel)
近年、Amazonや楽天が台頭し、顧客接点が対面からデジタルに移行してきた。さらにコロナ禍でデジタル化が加速し、ECだけでなく金融や行政サービスもオンラインで完結できるようになった。サービス提供の場がデジタル化したことで、お客様対応の在り方も変化。対面でのサポートができなくなったことからコールセンターのニーズが高まる一方で人材採用・育成が難しく、リソースの逼迫や対応品質に課題を抱える企業が増えている。
「課題解決の肝は、最小の人数で、最大の顧客体験を提供できる体制の構築。AI時代のカスタマーサポートは、単純な問い合わせ対応にAIやツールを活用し、人間が1対1での手厚いサポートに注力すべき」(宮崎)
こうした体制を実現するには、ロイヤルカスタマーに向けて1対1で手厚いサポートを提供する「ハイタッチ」と、AIやコンテンツを活用してお客様の自己解決をサポートする「ロータッチ」「テックタッチ」に対応を分類することが重要となる。
そして、このロータッチ・テックタッチに最も活用できるのが、FAQ(よくある質問)だ。
「FAQを充実させることで、問い合わせ削減や自己解決につながり、顧客体験向上が期待できる」(宮崎)
エンドユーザーの自己解決を促進するために提供している検索SaaS「Helpfeel」において、一番の特徴は「意図予測検索」という特許を取得した独自技術。曖昧な表現・言葉遣いやスペルミスなども含めて「お客様の使う言葉の意図」を汲み取り、的確な回答を提示できるため、検索ヒット率98%を実現。お客様が質問を自己解決できるので、問い合わせが削減される。これによりCSの業務効率化を図るとともに、お客様の満足度を上げることができる。
一例として、伊予銀行のFAQを使ってお客様の検索体験を紹介。届出印をなくしたと仮定して、検索欄に「届出印」と入力すると予測の質問文が表示され、自身に合った質問を選択するだけで解決方法がわかる。また「なくした」など別の入力でも同じ回答に辿り着ける。
続いて、AIを活用した2つの機能を紹介。
問い合わせフォーム「Contact Sence AI」は、フォームに入力された「文章」から意図を推測し、FAQを表示することで自己解決へ導く機能。何度も届く同じような問い合わせを減らし、CSの人手不足を解消する。
FAQ作成支援ツール「Helpfeel Generative Writer」は、「FAQの文章を作成するのが手間」という課題を解決するツール。ChatGPTを活用して過去の問い合わせと回答の実績を元にFAQのタイトルや内容の案を自動生成し、作業を効率化する。
続いて3つの事例を紹介。キャンペーン時の問い合わせを約95%削減した株式会社カウシェ(KAUCHE)の事例、問い合わせの10%を削減し、売上向上にも貢献したラッシュジャパン合同会社(LUSH)の事例、PDCAサイクルを改善したLINEヤフー株式会社(Yahoo!フリマ)の事例を解説。3社ともにHelpfeel導入によって省人化を図り、顧客満足度を向上させ、より重要な業務に注力できるようになった。
最後に「Helpfeelは問い合わせ削減、売上貢献、PDCA設定など、さまざまな角度からお客様を支援している。AIを活用した機能に加えて、人による手厚いサポート体制が特徴。Webディレクター、テクニカルライター、カスタマーサクセスなど各部門のプロフェッショナルがデータを元に効果的な運用・改善をアドバイスして、Helpfeelの効果が最大化するように支援する」と述べ、第1部を締めくくった。
「人がすべきCS」と「AIに任せられるCS」の領域とは?
(第2部:チャネルトーク)
新規顧客の獲得が難しい時代において、既存顧客との関係を維持する「リテンション」を支える鍵「顧客体験」の重要性が高まっている。そこでチャネルトークが注目するのは、上位20%の顧客が売上の8割を生み出す「パレートの法則」。
「既存顧客からの売上割合が高いブランドは、マーケティングをしなくても安定的な売上が発生し、しかも上位20%に集中することでリソースを効率的に運用できる」(勝藤氏)
実際に調査を行ったところ「上位20%の売上占有率が60%を超えると、売上成長率が高い」という結果となった。
「これからの時代、人にしかできないVIP接客で離脱を防止し、良い接客体験でファン・口コミを増やすことが重要。これらはAIでなく人にしかできないアクションである」(勝藤氏)
ビジネス成長の鍵としてCSへの期待が高まる中で、チャネルトークは「顧客理解のためのコミュニケーションサービス」と「AIサービス」を展開し、CSの課題解決をサポートする。
チャネルトークを使えば、接客チャット・社内チャット・CRM・チャットボット・音声通話など、様々なコミュニケーションチャンネルを一つにまとめて管理することが可能。お客様はサイト上でログインすることなくチャットを使用でき、サイトを離れてもお客様の望む方法でお問い合わせできる仕組みになっている。
「お客様とのコミュニケーションを一元化することで、顧客管理やフィルタリングが効率化でき、CSの注力ポイントを見つけやすくなるメリットがある」(勝藤氏)
一般的な問い合わせ対応はAI・チャットボットに任せ、人はVIP顧客の接客に注力することで、満足度向上につなげられる。
「CSで最も重要なのは、会社の価値に共感してくださるVIPのお客様からのフィードバック。お客様とコミュニケーションをしながら、どうしたらお客様の課題解決ができるか?を考えるのがCSの本質である。VIPのお客様のフィードバックを改善に活かすことで、より多くのお客様の獲得につなげられる。こうした背景から、新規顧客にはチャットボットが対応し、VIP顧客には人が対応するという企業も増えている」(Jay氏)
今後、CS領域においてAIで解決すべきことは以下の3点。これらによりCSの業務効率化を図り、人手不足を解消できる。
- 誰でもできる仕事
- 期待値が高くない問い合わせ
- 上の2つを24時間・大量処理
例えば、会員加入やサイト操作などユーザーが自己解決できる問い合わせは、FAQツールやチャットボットで解決する。またFAQなどで解決できず、かつ単純反復の作業が必要な問い合わせは、AIを活用してCS業務や接客フローの自動化など、チャネルトークがオペレーション効率化に貢献できる領域となる。
「VIPの接客には人の判断やナレッジが必要となるので、ツールや効率化ではなく、VIPに特化した人材の育成が必要で、人はここに注力すべき。そうしたスキルを備えた人材は市場価値が上がっていくだろう」(勝藤氏)
チャネルトークでは、CSの根本的な課題解決を目指して、社内にAI専門チームを新設した。CS対応における全領域でAIを活用した生産性向上に寄与すべく、力を入れて開発を進めていく。
AIと共存する「未来のCS」
(第3部:ディスカッション)
第3部は2つのテーマについて、ディスカッション形式で進行。
まず1つ目のテーマは「生成AIのサポート業界への影響と活用方法」。
宮崎は「生成AIはホワイトカラーの業種すべてに影響していくが、問題となるのは‟確からしさ”。AIは多くのデータを元に回答を出すが、間違える部分も多い。丸投げするのでなく、人が責任をもって価値貢献すべき部分を見極め、AIと付き合っていくことが大切」と述べた。
続く2つ目のテーマは「今後のCS組織の働き方や未来について」。
勝藤氏は「AIが実働化する中で、CSのキャリアパスも変わってくるだろう。例えば、FAQをデザインできる、接客をして良い顧客体験を与えられるなど人材・スキルが、評価されるようになるのではないか」と予測。
また宮崎は「意思をもって戦略を実行することは、人間にしかできない。例えば、フィードバックをプロダクト改善につなげるなどは、人間の意思や組織とのコミュニケーションなどが必要になる。これらはAIには難しく、CSの活躍のチャンスがある」と述べた。
最後にJay氏は「今後、AIのカバー領域が増えていく中でCSとして生き残るには、AIを活用して省人化するプロセスを作る、CSのスペシャリストになること。もう一つは、顧客の声と社内の各部署に繋げるジェネラリストになること。顧客から吸い上げた課題を整理して、社内を動かす役割を果たせれば、COOなどの重要な役割・キャリアパスも見込めるのではないか」と話し、CSに限らず、人間はAIには難しい「課題をカテゴライズして、問題を解決する力」を備えることが求められると締めくくった。
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