DX・AI活用を進めるほど、社内問い合わせが増えてしまう――現場が抱えたジレンマ
── はじめに、お二人の業務内容について教えてください。
幸田様 私は建築本部の建築企画部に所属し、主に建築部門における業務改善やDX推進、建築部門のシステム管理を担当しています。あわせて、建築本部内の総務的な業務や人材採用・育成、他部署との連携窓口など、現場と本社を繋ぐ幅広い業務を担っています。
冨樫様 私は情報システム部で、全社で利用するPCやルーターなどのIT機器管理を行っています。それに伴うシステム周りの問い合わせ対応や、社内向けの情報発信も主な業務です。
── 建設業界ならではの背景も含め、Helpfeel導入前に抱えていた課題についてお聞かせください。
幸田様 当社も含めて建設業界はアナログな文化が根強く残っています。全国に点在する建設現場と本社のやり取りは、今でも「困ったらまず電話する」というスタイルが主流です。

冒頭の写真で建設中だった、青森駅東口の商業施設などが完成した様子
しかし現在、業界全体で深刻な人手不足が進んでおり、限られた人員で成果を出すためのDX推進は避けて通れない命題です。そこで現場の効率化のために新しいITツールを次々と導入したのですが、今度は現場から「ツールの使い方がわからない」という電話が本社へ集中するようになってしまったのです。
現場でトラブルが起きても、私が会議中で電話に出られないことも多く、お互いにストレスが生じていました。このままでは本来注力すべき通常業務に支障をきたしてしまうという危機感がありました。
冨樫様 情報システム部でも、同じ壁にぶつかっていました。DX推進によって新しいシステムやデバイスが導入されるたびに問い合わせ数が跳ね上がり、1日に10〜15件もの電話が届く状態だったのです。
当時は次々にかかってくる電話で作業が中断されてしまい、メイン業務である機器管理やDX推進にまとまった時間を使えず、頭の切り替えが難しいことに苦心していました。また、私が一次受付を一人で担当していたため、対応が属人化していることも課題に感じていました。
── 当時はどのように社内の情報周知を行っていたのでしょうか?
幸田様 もちろん社内ポータルサイトにマニュアルやFAQ、さらに質問フォームも設置するなど、既存の環境でできる限りの対策は打っていました。
しかし、現場の社員からは「欲しい情報がどこにあるか見つけられない」という声が多く、結果として「自分で探すより、電話で聞いた方が早い」という無意識の習慣を打破できなかったのです。こうした状況から、現場が自発的に情報を探せる、使い勝手のよいシステムが必要だと確信しました。

建築本部 建築企画部 兼 DX推進室 DX企画部 主任 幸田 慎ノ介様
── Helpfeelを選ばれた決め手は何でしたか?
幸田様 比較検討の段階ではRAG(※)を活用したAIチャットボットも候補に挙がっていましたが、一番の懸念は「ハルシネーション(AIがもっともらしい誤った回答を出してしまう現象)」でした。問い合わせ対応を減らすために導入するシステムなのに、AIが誤った社内ルールや操作方法を提示してしまっては本末転倒ですし、現場に混乱を招くだけだと考えていたのです。
※RAG(検索拡張生成):生成AIが回答を作成する際、社内マニュアルなど、指定したデータから必要な情報を検索・参照して答える技術。
その点、Helpfeelはユーザーの意図を汲み取りながら、管理者が用意した「正しい情報」へ確実に導くアプローチが明確でした。加えて、全社員分のアカウントを個別に契約する必要がない料金体系だったことも、2,000名近い従業員を抱える当社にとっては、コスト面で非常に大きな魅力でしたね。
実は、最初は私の部署だけで導入しようと考えていたのですが、単体ではどうしてもコストメリットを出しにくいと悩んでいました。そんなとき、ちょうど情報システム部でも同じ課題を抱えていると知ったのです。それなら将来の全社展開を視野に入れつつ、まずは2つの部署で一緒に、小さくスタートさせようと決めました。
スマホ画面からワンタップで検索。
現場の「探す手間」をゼロにするアクセス導線
── Helpfeelを導入し、どのようなことから運用を始めましたか?
幸田様 社内ポータルサイトのSharePointに点在していた既存情報を整理し、Helpfeelへ移行することから始めました。PDFのまま丸ごと掲載されていて現場からは読みづらかったマニュアルなどは、重要な部分を切り出して記事化し、残りはHelpfeelの回答画面から該当リンクへダイレクトに飛べるよう整理していきました。
冨樫様 基本的なメールの設定方法や、クラウドストレージの操作手順など、現場から頻繁に届く「初歩の質問」もこのタイミングで網羅的に記事化しました。これまでの運用で煩雑になっていた情報を一新する良いきっかけになりました。
── Helpfeelの活用を習慣化するために、どのような工夫をされましたか?
幸田様 社員がわざわざ「探そう」としなくても、自然と目に入る導線設計にこだわりました。
具体的には、社内ポータルのトップ画面や部署ページの一番目立つ場所に、オリジナルのバナーを設置しています。また、PCを持たない現場の職人や社員でもスマートフォンからすぐにアクセスできるよう、QRコードを印刷したポスターを作成して全国の作業所に配布しました。
さらに、Helpfeelへは全社員に支給しているスマートデバイスのポータルアプリから任意でインストールできるようにし、ブラウザを開く手間なく検索できる環境を提供しています。


(上)「クリックした先で自己解決できる」と直感的に伝えたバナー/
(下)Helpfeelは会社支給のPCやスマホ、タブレットから閲覧できる
── 運用していく上で、特に重視している指標(KPI)はありますか?
冨樫様 最も注目しているのは、「no-strict-hit(厳密にヒットするページが無かった場合の検索キーワード)」の割合と、その具体的な内容です。要は欲しい情報が見つからなかった場合、個別の問い合わせが発生してしまうため、ここに挙がったキーワードを確認し、優先的に新しい記事を追加するようにしています。
幸田様 Helpfeelを使って、欲しい情報にたどり着けない体験を社員がしてしまうと、その後使ってもらえなくなります。そのため、「no-strict-hit」になったキーワードが私たちの管轄外の内容だったとしても、「その件については〇〇部へお問い合わせください」と適切な窓口へ案内する記事を作成しています。
また、導線の改善に役立てるため、ポータルサイトのバナーやQRコードにパラメーターを設置し、社員がどのルートからHelpfeelにアクセスしているかも常に追っています。
── Helpfeelのカスタマーサクセスへのご感想もお聞かせください。
幸田様 定期的に打ち合わせをし、データ分析をもとに記事の追加や更新の提案をいただいています。「当たり前すぎて、記事にする必要がない」と思っていた基本的な内容でも、実は多くの社員が検索して困っていることに気づかされるなど、客観的なデータに基づいた提案にとても助けられています。
「自己解決文化の定着」への挑戦が
最優秀賞に
── Helpfeelを導入してからの具体的な効果を教えてください。
冨樫様 本社への問い合わせ数は40%以上削減することができました。電話対応によって仕事が中断することが劇的に減ったため、DX推進や管理業務といった本来のコア業務に集中できるようになりました。

DX推進室 情報システム部 主任 冨樫 奈都乃様
幸田様 個別の問い合わせを見ても、自己解決できる内容の質問を受けることが明らかに減りました。調べればわかる不明点は、Helpfeelで検索してもらっていることがうかがえます。
また、どうしても対応が必要な場合でも、回答にかかる手間が激減しました。以前はマニュアルの該当箇所を探して、メールやチャットに該当箇所のスクリーンショットなどを添付して説明していましたが、今は「この記事を見てください」とHelpfeelのURLを送るだけで完結します。
冨樫様 部署内で記事のURLを共有しておけば、私以外のメンバーでも迅速に回答できるため、課題に感じていた問い合わせ対応の属人化も解消されました。
── セッション数など、データ分析の傾向はいかがでしょうか?
幸田様 導入当初からの数か月で、ページの表示回数(PV数)が月間3,000〜4,000件、セッション数(※)は1,000件前後になりました。当初の想定を上回り、多くの社員に活用されていることを肌で感じて嬉しく思っています。
※セッション数:ユーザーがそのサイトに訪れた回数
これは、Helpfeelへの導線を多く設けた効果だと捉えています。バナーが何度も目に入るうちに、「ここにAIナレッジ検索システムがある」と自然と覚えてもらえた。吹き出しのイラストが描かれた画像をバナーにしたことも、直感的な認知に役立ちました。
── Helpfeel導入が、社内の「業務改善ワークショップ」で最優秀賞を受賞されたと伺いました。
冨樫様 「業務改善ワークショップ」は、年1回、15グループの業務改善の取り組みを発表する全社でのイベントです。今回は本社各部署および支店(作業所含む)から100件以上のエントリーがありました。DX推進室からこの取り組みをエントリーしたところ、社長を含めた経営層から高く評価され、全国大会で最優秀賞に選ばれました。
プレゼンテーションでは「単なるツール導入ではなく、自己解決文化の定着を目指す挑戦である」という思いや、具体的な削減目標、施策、そして実績を発表しました。システムを導入して終わりにするのではなく、社員が「また使いたい」と思える仕組みづくりを徹底し、自ら調べて解決する風土変革にチャレンジした点が評価されたのだと思います。
幸田様 最優秀賞をいただいたことで、社内でのHelpfeelの認知がさらに拡大しました。発表の翌月から、それまで月間1,000件前後だったセッション数が一気に倍の2,000件を突破し、まさに全社のインフラへと急成長したのです。この勢いに伴い、PV数も現在は毎月10,000回をコンスタントに超えるようになり、多い月には14,000回を突破するまでになりました。

10部門に利用が拡大。人手不足が進む建築業だからこそ、自己解決できる組織へ
── 今後の展望をお聞かせください。
冨樫様 今春からは土木本部や管理本部の複数部門、安全推進室もHelpfeelの運用に加わり、現在は合計10部門で活用しています。カバーする領域が広がったことで、Helpfeelはさらに全社員の活動基盤としての価値を高めています。
また、Helpfeelをはじめ、今後も社内業務への適切なAI活用をさらに進めたいですね。人が対応する領域をスマートに減らすことができれば、対応の属人化がなくなり、担当メンバーが代わったとしても後任が苦労しない持続可能な組織が作れると考えています。
幸田様 これからの建設業界において、人手不足の深刻化は避けて通れない現実です。限られた人数で収益を出し続けるためには、省力化しながら生産性を上げることが欠かせません。現場は日々動いているからこそ、より良い業務のあり方を本社がリードして模索していきたいです。

── 最後に、貴社と同様の課題を抱える企業へのメッセージをお願いいたします。
冨樫様 Helpfeelはキーワードの「表記ゆれ」に非常に強く、ユーザーが意図した答えに直感的にたどり着きやすいのが、管理者として非常に頼もしいです。これまで曖昧な言葉遣いで届いていた問い合わせに対して、私たちが意図を推測して答えていた部分を、システムが先回りして予測し、回答へ導いてくれるのは本当にありがたいですね。
幸田様 デザインが非常にシンプルなので、ITに不慣れな現場の社員でも直感的に操作できる点が素晴らしいです。使いやすい導線を設計し、AI検索で欲しい情報がすぐに見つかる体験を社内に増やしていければ、自己解決する文化は無理なく自然に定着していくと思います。
※本記事の内容、数値、所属・役職は、取材当時の情報です。


