月6,800件の問い合わせが逼迫要因に。サービス利用を諦める“離脱防止”が最優先の課題
── はじめに、カスタマーサクセス部の業務内容を教えてください。
当社は、外国為替証拠金取引(FX)などのCFD取引を中心に、個人投資家向けのオンライン金融取引サービスを提供しています。カスタマーサクセス部では、「みんなのFX」「みんなのシストレ」などをご利用いただくお客様をサポートし、問い合わせ対応やFAQの運用を行っています。問い合わせチャネルは電話と問い合わせフォームがあり、社内のオペレーター4名で対応しています。

私たちの部門では、お客様の声(VoC)を集め、サービス品質や顧客満足度の向上につなげる活動にも力を入れています。問い合わせを通じていただく要望や意見を集計・分析し、他部門と連携して改善施策を推進しています。こうした活動は会社全体で重視しており、反映された改善内容は「改善レポート」としてホームページ上でお客様に報告しています。
── Helpfeel導入前、お客様への情報周知や問い合わせに関して、どのような課題がありましたか。
お客様数の増加に伴って、問い合わせ件数も右肩上がりで増加していました。ピーク時は月6,800件にも達し、オペレーターが日々問い合わせ対応に追われ、時間的な余裕がない状況が続いていたのです。
ホームページにテキストで「よくある質問」を掲載していましたが、どの内容がどのくらい閲覧されているかを計測できておらず、お客様が抱える課題の傾向を把握できていませんでした。
また、お客様が不明点をホームページで調べようとしても、検索キーワードが完全一致しないとヒットしない仕様だったため、目的の情報にたどり着けない状況が見られました。その結果、お客様からの問い合わせの中には、ホームページにすでに掲載されている内容も多く含まれていました。特に多かったのが、ログイン関連の質問です。「よくある質問」に対処法を詳しく載せているにもかかわらず、同様の問い合わせが数多く寄せられていました。
なかには、問い合わせをせずにサービス利用を諦め、離脱してしまうお客様もいたかもしれません。「お客様が問い合わせをせずに自己解決できるサービスを提供する」ことをミッションに掲げる部門として、この“離脱”を防ぐことは最優先の課題でした。

カスタマーサクセス部 カスタマーサービス2課長 アカウント管理課 髙橋 徳様
── 課題を解決するために、どのような検討をしましたか。また、最終的にHelpfeelを導入した決め手についても教えてください。
お客様が不明点を自己解決できるFAQを構築することを目指しました。その際に重視したのは大きく2点です。ひとつは、自分たちで記事の作成や編集ができること。もうひとつは、データをもとに運用の改善サイクルが回せることです。
以前は「よくある質問」を更新する際、ホームページの管轄部署へ指示書を提出し、テスト環境での確認を経て本番環境に掲載するステップを踏む必要がありました。緊急時を除き、通常は掲載まで1週間ほどかかっており、お客様にタイムリーに情報を提供できないことが課題でした。
閲覧データを分析できていなかったため、どのようなFAQ記事が求められているのかも判断する根拠がありませんでした。そのため、新たに導入するFAQシステムでは、データドリブンな運用を実現したいと考えたのです。
いくつかのFAQシステムを比較検討した結果、これらの条件を満たしていたのがHelpfeelでした。FAQの利用状況をリアルタイムで確認できる点、そしてカスタマーサクセスによる継続的なサポートを受けながら運用できる点が導入の決め手です。FAQから取得できる検索ログも、お客様の声(VoC)として活用できる点にも大きな可能性を感じました。
検索ログをもとに「取引時間」などの記事を優先表示。FX特有の質問も迅速に、誰にでもわかりやすく
── Helpfeel導入後は、どのような目標を設定し、どのような運用をしていますか。
導入にあたり、定量目標を2つ設定しました。問い合わせ数を導入前から8%削減することと、自己解決可能な問い合わせの割合を全体の35%以下に抑えることです。
最初に取り組んだのは、既存のFAQコンテンツの移行と文章表現の見直しでした。以前は複数のメンバーが記事を作成していたため、文体や構成にばらつきがあり、お客様にとって読みにくい記事が多く見受けられました。これを機に、一つひとつの記事を読み直し、よりわかりやすい表現に統一しました。
さらに、問い合わせフォームにもFAQを埋め込み、フォームにアクセスしたお客様が自然にFAQを参照し、自己解決できる導線を設計しました。問い合わせフォームの改善と導線改修は最も注力したポイントです。
問い合わせフォームの入力内容にあわせて、FAQ記事がサジェストされる
── Helpfeelのどのような機能が役立っていますか。
より多くのお客様が不明点を自己解決できるようにするため、FAQのトップ画面に人気のキーワードや閲覧数が多い記事を固定表示できる機能が役立っています。検索傾向にあわせて、固定表示する内容を柔軟に変更できる点は大きなメリットです。
たとえば、最近では、祝日前に「取引時間」というキーワードでの検索が増えていました。そこで、「祝日でも取引ができるかを知りたいお客様が多い」と考え、祝日前には取引時間に関する記事をトップに固定表示しました。検索データに基づいてお客様の関心を先回りし、“知りたいときに、知りたい情報が見つかる” 体験を提供できていると感じています。
また、カスタマーサクセス部内だけで記事の編集が完結できるようになったことで、社内審査さえ通ればすぐに記事を公開できるようになり、掲載スピードが大幅に向上しました。管理画面の操作もわかりやすく、運用時のストレスはほとんどありません。
── Helpfeelのカスタマーサクセスへのご感想もお聞かせください。
新規のお客様の視点で文章表現をチェックいただくなど、自分たちでは気づけないアドバイスが多く、感謝しています。現在はデータ分析結果を一緒に見ながら、検索しても該当するコンテンツが何もヒットしないno hit(ノーヒット)の削減に注力しているところです。
外国為替証拠金取引(FX)は、難しい金融用語をお客様にお伝えする場面があります。そうした金融用語の記事も、カスタマーサクセスと相談しながら言い換え表現を取り入れるなど、よりわかりやすい情報提供を進めることができています。
問い合わせ数は1年で半減。“電話対応5時間短縮”と“対応品質の向上”を両立
── Helpfeelを導入してからの具体的な効果を教えてください。
FAQの閲覧数とセッション数が大幅に増加しました。検索ログに基づいてお客様が求める記事を追加するとともに、FAQへの導線も改善した効果が表れています。ホームページやマイページ、アプリ、自動メールなど、あらゆる接点からFAQにアクセスできるよう導線を整備しました。
課題としていた問い合わせ数も、大きく削減できました。2024年3月は約6,800件に達していましたが、2025年3月には約3,300件にまで半減し、目標を上回る効果が出ています。特に、問い合わせフォームにFAQを埋め込んだことが功を奏し、フォーム経由の問い合わせ数が大きく減少しました。自己解決できる問い合わせの割合も目標の35%以下に抑えられています。
── 問い合わせを受けるオペレーターの体制や業務内容などに変化はありますか。
問い合わせ数が減ったことで、コールセンターの電話対応時間を、7〜22時の「15時間体制」から8時〜18時の「10時間体制」へと短縮できました。時間帯別の問い合わせ内容を分析したところ、夜間はログインや入金関連など、FAQで自己解決できる質問が中心でした。FAQの充実と導線改善によって自己解決の基盤が整ったことから、「電話対応を5時間短縮しても十分に対応できる」と判断できました。
問い合わせ対応の負荷が減ったことで、オペレーターが業務改善やお客様対応の質向上に時間を使えるようになっているのもよい傾向です。実際に、お客様から「Aさんの対応が丁寧で安心した」「Bさんの回答がわかりやすかった」と、オペレーターの名前を挙げて感謝の声が寄せられることも増えました。オペレーターに心理的な余裕が生まれたことで、より丁寧で満足度の高い対応ができていると感じています。
“問い合わせをなくす”のではなく、“安心して使える体験”を届けるために
── 今後の展望をお聞かせください。
今後もFAQを充実させ、自己解決の範囲をさらに広げていきたいと考えています。当社のサービス特性上、金融経済の大きなニュースや為替相場の変動があると、一時的に問い合わせが増える傾向があります。こうした問い合わせは、なくすことを目指すのではなく、お客様に安心してサービスを利用いただけるよう、丁寧に対応していくことが重要だと考えています。
一方で、基本的な操作や手続きなど、人が対応しなくても十分に対応できる内容については、FAQを通じて確実に解決できるよう、改善を続けていきます。

さらに、HelpfeelのAI機能をはじめとするテクノロジー活用を深め、社内オペレーターの対応履歴やマニュアル、カスタマーサクセス部のナレッジを活かして、FAQの精度向上や業務効率化にも取り組んでいきます。“人による対応”と“AIの支援”をうまく組み合わせることで、お客様の体験価値をさらに高めていきたいですね。
── 最後に、貴社と同様の課題を抱える企業へのメッセージをお願いいたします。
FAQを導入しても、どこから改善すればよいのか、何を見て判断すればいいのかが分からず、改善が進まないという悩みは多くの企業が直面する課題でしょう。
Helpfeelはデータ分析を通してお客様のニーズや行動を可視化できるうえ、カスタマーサクセスによる具体的な改善提案もあります。「改善の優先順位」や「見るべき指標」が明確になることで、着実に成果を積み重ねていくことができます。ノウハウを持つ専門家のサポートを得ながら、FAQを戦略的に育てていきたい企業にとって、Helpfeelは“成果を生み出すパートナー”といえる存在です。
※所属・役職はインタビュー当時のものです。
