電話問い合わせが月4,000件超。「探せないから聞いたほうが早い」状態に
── はじめに、ダイレクト営業部の業務内容を教えてください。
ダイレクト営業部 部長 小林 紀一様
大澤様 ダイレクト営業部は、インターネットバンキングやバンキングアプリなど、非対面施策の企画・運用をしている部門です。私は渡辺とともにホームページやSNS等を幅広く担当しています。
小林様 コールセンターの運営も非対面チャネルと位置付け、ダイレクト営業部が管轄しています。お客様からのお問い合わせは主に行内のオペレーターが約10名体制で対応し、一部はアウトソースしています。問い合わせチャネルは電話がメインですが、一部は問い合わせフォーム経由でのご質問もあります。
── Helpfeel導入前、どのような課題がありましたか。
大澤様 当行ホームページには各商品・サービスページに670件程の「よくある質問」が点在していました。たとえば、バンキングアプリ、クレジットカード、というような分類で、商品・サービスのページごとに「よくある質問」をテキスト掲載しているのみでした。お客様は不明点があった際はまずはご自身の求める情報が載っているページを探す必要があり、たどりつかないと疑問が解決しないという状況になっていたため、ご不便をおかけしていたかと思います。
小林様 コールセンターでは電話問い合わせが月4,000件以上あったことに悩んでいました。その内容は基本的なものが多く、最近ではインターネットバンキングとアプリに関する問い合わせも増えていたため、どうにか件数を減らしたいと考えていました。コールセンターで同時に受けられる電話の数には限りがあるため、せっかくお電話いただいてもオペレーターにつながらないといった状況も起きていたかと思います。
また、コールセンターは平日日中の時間帯に運営していますが、夕方以降や休日にご不明点が生じるお客様もいらっしゃるはずです。そう考えると、現状の問い合わせ対応の体制だけではお客様満足度を上げられないとも感じていました。
大澤様 一部の商品・サービスについては、チャットボットを設置していたものの、担当者の異動後はメンテナンスできていない状態が続いてしまっていました。電話が多い背景も、お客様は「探せないから聞いたほうが早いよね」という心理状態になっていたのかもしれません。
とはいえ採用や育成もありますので、やみくもにコールセンターの人数は増やせません。このままお電話を受けきれていない状態は、私たちが目指す「サービスの継続的な向上」という点において、改善が必要だと考えました。
ダイレクト営業部 次長 大澤 花江様
── 課題を解決するために、どのような検討をしましたか。
大澤様 参考として他行のホームページを見ると、サイト内検索だけでなくFAQシステムを運用しているケースが多くあり、当行もFAQシステムを導入すべきではないかという話になりました。コールセンターの体制も整えつつ、ツールの導入でも解決する、という両面で解決ができないかと。
小林様 コールセンターの体制という点ではFAQシステムの導入を機に、コールセンターとの連携も強化したいと考えていました。コールセンターは問い合わせログを保有していたものの、関係部署と連携できていなかったので、当行全体でお客様のニーズを把握する体制を作りたいと思っていたのです。
── 数あるFAQシステムの中で、Helpfeelを導入した決め手を教えてください。
大澤様 運用のコンサルティングがあったことに惹かれました。FAQの知見が行内になかったので、支援いただけることは心強く感じましたね。
小林様 意図予測検索機能も、決め手のひとつです。チャットボットだと不明点を文章で入力する方が多いと思うのですが、インターネット検索のように思いついた単語でキーワード検索し、適切な記事がヒットすれば利便性が高いだろうと考えました。
銀行の立場としては、カテゴリー別に表示されるFAQのほうが管理しやすいのですが、お客様はご自身の不明点がどのカテゴリーに該当するのかはわかりません。お客様目線で考えると、Helpfeelならスムーズに困りごとを解決できると思い、導入を決めました。
仮に電話問い合わせを35%削減できたら300時間のリソースが空く。付加価値業務へのシフト
── Helpfeelの運用において、どのようなことを意識していますか。
小林様 導入にあたっては、お客様が不明点を自己解決できるようにし、シンプルな問い合わせ数を減らして相談・提案業務を充実させたいと考えました。仮に電話問い合わせを35%減らせた場合、月間で300時間弱のリソースを捻出できるので、サービス向上やお客様のニーズを深く掘り下げるなど、より付加価値の高い活動に時間を充てられます。
大澤様 運用体制には、私たちホームページ担当者に加え、コールセンターの担当者にも入ってもらいました。私や渡辺はコールセンターの状況を詳しく把握しているわけではないので、お客様対応の最前線にいる担当者の意見をFAQに取り入れたいと考えました。コールセンター担当者も問い合わせを減らしたい思いは同じなので、前向きに協力してくれています。最近では、コールセンター側の課題感や改善提案を積極的に挙げてもらっています。
渡辺様 注力しているのは、no hit(ノーヒット:検索しても記事がヒットしないこと)を少なくすることです。お客様が検索しているのにもかかわらず、何も情報がないのはよくありませんので、ここは優先的に対応するよう心がけています。
大澤様 また、各部門にFAQの意識付けができるよう、ホームページコンテンツを更新する際の協議者フォーマットに「FAQ」という項目を設けました。コンテンツの更新内容とあわせてFAQの対応要否についても考えてもらうようにしています。
── Helpfeelのカスタマーサクセスへのご感想もお聞かせください。
大澤様 カスタマーサクセスの高い提案力を、いつも頼りにしています。当行のホームページやFAQの全体像をご理解いただいたうえで改善案を出してくれるので、自信をもって運用できています。
渡辺様 担当者の異動をきっかけにFAQの運用が回らなくなることを懸念していましたが、カスタマーサクセスの伴走のおかげで、部門間連携などの実行面に時間をしっかり使えていることがありがたいです。
ダイレクト営業部 部長代理 渡辺 菜月様
問い合わせフォーム画面にもAIを使用すると、7割が問い合わせの直前に解決する結果に
── 導入してからの具体的な効果を教えてください。
渡辺様 FAQのアクセス数は、月2万セッションを超えています。コールセンターの対応時間外でもお客様がFAQで自己解決できていることがうかがえます。ホームページからのFAQへの動線にくわえ、アプリやLINEからも遷移できるようにした効果が表れているようです。
小林様 コールセンターでは前年比で月間300件ほど問い合わせを削減できています。中でも、増加傾向にあったインターネットバンキングとアプリに関する問い合わせを確実に減らせているので、嬉しい傾向です。
大澤様 問い合わせフォームもHelpfeelの問い合わせフォームAI(※)に切り替えたことで、フォームにアクセスしたお客様の自己解決も促せています。※オプション機能
直近では、問い合わせフォームからFAQに遷移して自己解決したお客様の割合が7割に達しました。意図予測検索機能によって、お客様が不明点を入力している最中に関連記事が表示されるので、FAQに自然とアクセスするのだと思います。
── その他、実感している効果はありますか。
大澤様 データからお客様が知りたいことを把握し、サービス改善につなげられています。
その一例として、口座番号の確認方法をFAQ検索するお客様が多いことがデータからわかりました。これまで、Web申し込みで口座を新規開設した場合の口座番号の照会は、コールセンターもしくは店頭に問い合わせる必要がありましたが、オンライン申請で解決できる仕組みを構築したのです。データに基づいた改善提案なので、他部門の担当者も納得感があり、スムーズに話が進みました。
私たちホームページ担当者、コールセンター、商品所管部の連携も強化できました。これまではお客様の声をコールセンターから商品所管部に伝えても対応が遅れがちで、コールセンターは意見が反映されないもどかしさもあったと思います。
今はFAQを担当する私たちが間に入ったことで話が進めやすくなったとコールセンターから感想をもらいました。お互い、気軽に声をかけられる関係性になりましたね。
渡辺様 コールセンター担当者も、問い合わせが増えそうな内容を事前に想定し、FAQへの記事追加を提案してくれるようになりました。記事を用意すれば問い合わせの急増を防げるという実感値もあるのだと思います。
異動は止められない。でも、運用は止めない。コンサル支援と共創コミュニティで挑む、金融DXの“継続戦略”
── 今後の展望をお聞かせください。
小林様 コールセンターが保有するデータとFAQのデータを連携し、双方が業務に役立てられる体制にすることを検討しています。将来的には、問い合わせ履歴からFAQ記事を生成できると理想的ですね。
大澤様 Helpfeelが立ち上げた「地銀AIコミュニティ」にも参加しているので、地銀が共通で持つ課題を持ち寄り、それぞれの知見を生かして解決に向かっていきたいと考えています。
渡辺様 AIなどの最新テクノロジーを活用した取り組みを始めている銀行もあるので、お互いに学び合えると嬉しいですね。
── 最後に、同様の課題を抱えている企業様にメッセージをお願いいたします。
大澤様 Helpfeelの一番のよさは、コンサルティング支援だと思います。銀行は人事異動によって数年ごとに担当者が入れ替わります。その度に運用を知識ゼロから始めるとなると、サービスの品質維持が難しくなると思うのです。
Helpfeelには伴走支援があるので、銀行側で体制変更があってもFAQを安定的に運用できます。金融機関のように定期的な異動が発生する企業でも安心して導入できるのではないでしょうか。
※所属・役職はインタビュー当時のものです。
