そもそもVOC (Voice of Customer)とは何か?
VOCとは、「Voice of Customer」の略語で、「顧客からの声」という意味です。
意見、要望、クレーム、指摘など、VOCにはさまざまな種類があります。
VOCは、コールセンターやカスタマーサポートに直接寄せられる声だけではありません。SNSやブログ、レビューサイト、GoogleMapなどに記載される口コミもVOCです。
また、VOCは必ずしも一般消費者向け(BtoC)の商品やサービスだけに寄せられるとは限りません。企業向け(BtoB)の商品やサービスに関するVOCもあります。顧客の特性によりVOCの収集方法は大きく異なりますが、「商品やサービスを利用する顧客からの生の声」という本質に違いはありません。
VOCを活用することの重要性
VOCを活用することが重要といわれている理由は、顧客のニーズと企業が提供する商品・サービスのギャップを埋めるためです。ビジネスでは企業側の自己満足ではなく、顧客に寄り添った商品・サービスの提供が求められます。それを実現するためには、顧客が何を求めているのか理解することが重要です。
VOCは、顧客の率直な意見・感想です。ポジティブな内容だけではなく、ネガティブな内容も含まれるため、商品・サービスが顧客からどう思われているのか把握できます。このような意見からは自社が誇るべき強みもわかれば、改善が求められる弱点も明確になります。
いち早くVOCをキャッチして顧客理解を高め、適切な対応や顧客ニーズを満たした商品・サービスの開発・改良に取り組んでいくことで、顧客ロイヤリティの向上や離反防止となるでしょう。その結果、自社の売上アップにもつながります。
VOC活用で得られるメリット
実際にVOCを活用することで、企業側はどのようなメリットがあるのでしょうか?ここで、具体的に得られるメリットをご紹介します。
客観的な視点を取り入れられる
VOCを活用することは、事業活動において客観的な視点を取り入れられるようになることです。顧客の声を聞くことで、主観的な視点を排除して客観的な視点から物事を捉えられるようになります。公平かつ中立な立場で物事を評価したり、顧客に寄り添って事業を展開したりするために欠かせない視点です。
客観的な視点を持つことで、個人の感情や先入観にとらわれず、公平で正確な判断が可能となります。また、さまざまな視点を持つことができるため、幅広いニーズを理解できるようになったり、今までにないアイデアを創出したりできるでしょう。
サービスや商品の品質改善に役立つ
サービスや商品の品質改善にVOCが役立ちます。この先も商品・サービスが売れ続けていくためには、改善・改良を繰り返していくことが欠かせません。顧客の要望や不満を聞くことで、自社で気付かなかった問題点や新たなアイデアが見つかる可能性があります。
顧客が不便に感じている部分やバグなどを改善することで、顧客ニーズを満たす商品・サービスに進化できます。また、多く寄せられた要望に応えていくことも、品質を向上させていくためには大切です。
顧客の声を無視して問題点の改善や要望に応えずにいると、信頼を失うことになり、売上や企業の評価が低下してしまうでしょう。VOCを通じて顧客ニーズを理解し、優先的に対処することは顧客満足度を高め、安定した売上・収益を築くことにつながります。
営業活動の改善が図れる
VOCの活用は営業活動の改善につながります。営業活動では、顧客ニーズを満たした提案によって信頼関係を築くことが重要です。顧客の心に響く営業をするためには、顧客のニーズだけではなく、商品・サービスの特徴や魅力を正確に理解することが求められます。
VOCからは顧客からの要望・不満だけではなく、商品・サービスで満足している部分もわかります。実際に商品・サービスを利用している人の声であるため、そのデータを営業活動に反映させれば、説得力のある説明や提案によって成約率を向上させることが可能です。
訴求力のある営業は、新規顧客はもちろん、既存顧客に対しても効果の高い営業活動を実現できます。商品・サービスをすでに利用している既存顧客に対する営業であれば、VOCから得た顧客ニーズに基づいて、最適なオプションの提案につなげられるでしょう。
顧客満足度の向上が図れる
VOCの活用は顧客満足度を向上させるメリットがあります。顧客満足度を高めることは、現代のマーケティングでは非常に重要です。顧客満足度が高いと顧客や商品・サービス、ブランドに対して愛着や忠誠心が強まります。その結果、新規顧客やリピーターの獲得をしやすくなります。
顧客の声を集めて分析し、それを商品・サービスの品質改善に役立てれば、中長期にわたって顧客と良好な関係を維持できます。また、クレームに対しても適切に対応することで、顧客の満足度は高まり、優良顧客となってくれるかもしれません。
口コミや要望からトレンドも把握できます。トレンドを押さえた商品・サービスを生み出すことも顧客ニーズを満たすことにつながるので、顧客満足度に影響を与えます。率先して顧客の意見を反映し続ければ企業のイメージアップにつながるので、世間からの評価も高まるでしょう。
有効なマーケティング戦略を考えられる
マーケティングに活かすことができるのもVOCのメリットです。商品・サービスを売るためには、効果的なマーケティング戦略や施策を図る必要があります。収集・分析した顧客の声から問題点や顧客ニーズなどの情報を引き出せれば、それに基づいて最適な施策や効果的なマーケティング戦略を展開していけるようになるでしょう。
些細な要望や意見であっても、それが企業にとって大きなヒントになる可能性があります。VOCを活用して商品・サービスの品質向上、営業活動の効率化、顧客満足度の向上を図っていくことで、結果的に売上アップにつなげていくことができるでしょう。
▼具体的なマーケティングでの活用方法は別の記事でも解説していますので併せてご覧ください。
VOCの主な収集方法
VOCを収集する方法は多岐にわたります。この項では、チャネルごとのVOCの特徴とその収集方法を整理します。
電話
電話でのVOCは顧客の生の声で、他のチャネルよりも顧客の感情を詳しく把握できます。電話内容を音声データとして記録したり、顧客情報と突合して収集したりすることで、VOCの利用価値が上がります。オペレーターの人力作業では限界があるため、CTI(Computer Telephony Integration)、CRM(Customer Relationship Management)などのシステムを導入することで、効率的に収集しましょう。
メールやチャット
カスタマーサポートで受け付けるメールやチャットの内容もVOCとして収集しましょう。これらは電話とは異なり、営業時間に関わらず顧客が問い合わせできるので、24時間365日、VOCを収集できます。電話では言いにくい内容もテキスト上でなら伝えやすいという顧客も多く、より率直な意見が集まりやすいです。
SNSやブログ
SNSやブログなどからVOCを収集するには、企業側は自社の商品やサービス名を検索する”エゴサ(エゴサーチ)”で自ら意見を収集しにいかなければなりません。収集に手間こそかかりますが、自然体で発信される内容であることから顧客の本音を知ることができます。
モニター調査
まだ市場に出ていない商品に対するVOCを求める際は、モニター調査の実施が有効です。サンプル品などを配布し、実際に使ってもらったうえでアンケートに回答してもらえば、市場に出る前に、顧客の反応を知ることができます。配布用のサンプル品や協力へのお礼の用意など、VOCの収集に一定のコストがかかる点には留意しましょう。
VOCの収集にコールセンターは適しているのか?
コールセンターには、「サービスにログインできない」「製品が故障した」といった緊急性の高いVOCが集まります。そうしたトラブルに関するVOCは温度感が高く、顧客側から即時の回答を求められる傾向があります。企業が優先的に取り組むべき課題を察知できることが、コールセンターがVOC収集に適している点です。
しかし、コールセンターの活動のみでは、VOCを網羅的に収集することはできません。前述の通り、VOCにはトラブルに関するもの以外にも、意見や要望などさまざまな種類が存在します。コールセンターに寄せられるVOCに限らず、幅広いVOCを収集して活用しなければ、顧客の意見を正しく汲み取ることができません。そのため、顧客接点の最前線であるコールセンターをVOC収集の起点にしながら、SNSや口コミ等他のチャネルからもVOC収集をする体制構築が必要です。
コールセンターでVOC分析を実施する際の流れとポイント
コールセンターでは毎日多くの問い合わせが届くため、VOCを分析して業務に取り入れていきましょう。ここで、コールセンターを通じてVOCを収集・分析する流れとポイントをご紹介します。
実施する目的を明確にする
無計画にVOCの収集を行っても、無駄に労力やコストがかかってしまう可能性があります。また、収集できても、分析するべき内容やターゲットなどが明確に決まらず、有効活用できない可能性も考えられるでしょう。
VOCを適切に収集・分析し、有効活用していくためには実施する目的を明確にすることが大切です。VOCを活用する目的には、以下の例が挙げられます。
- サービス・商品の改善
- 新サービス・商品を開発するためのアイデアの創出
- ブランドイメージの醸成
- マーケティング手法の最適化
- 製品のリスク調査・リコール対策
このように、VOCはさまざまな目的に活用できます。自社の課題や悩みを洗い出し、VOCをどう活用していきたいのか具体的に目的を検討していきましょう。
調査項目と収集方法を選定する
次にVOCの調査項目と収集方法を選定します。調査項目や収集するチャネルは、目的に合わせて選ぶことがポイントです。例えば、新商品・サービスの開発を目的にしているのであれば、既存商品・サービスに対する不満・要望に絞り込んで調査するのがよいでしょう。そうすることで、顧客が求めているものが何か理解できます。
VOCを収集するチャネルは、それぞれの特性を理解して選択しなければなりません。上記の例であれば、問い合わせ電話・メール、顧客アンケートやSNS、レビューサイトなどから商品・サービスに対する本音を見ることができるでしょう。また、商品・サービスのターゲット層によっても活用するチャネルが異なるため、その点に考慮することもポイントです。
収集するチャネルは1つに絞らず、複数のチャネルから収集しましょう。そうすることで、幅広い顧客の意見や声を捉えることができます。
VOCデータの収集・整理を行う
VOCの収集方法が決まったら、収集を始めます。収集をする際は、期間を決めておきましょう。VOCは継続的に収集していく必要がありますが、期間を決めないと収集活動に区切りが付かず、先に進めないという状況に陥ってしまいます。それを避けるためにも、目的に合わせて期間を設定する必要があるのです。
各チャネルから膨大な量のVOCを収集することになるので、ツールを活用すると効率よく収集できます。また、収集したVOCの全体像を把握するために、整理することも大切です。例えば、VOCの内容をカテゴリーに分けたり、VOCの質と量を評価して重要度・優先度を決めたりするとよいでしょう。
VOCデータを分析する
収集・整理したVOCデータを分析していきましょう。テキスト分析ツールや統計ソフトなどを活用することで、VOCデータを可視化することが可能です。可視化されたデータから顧客に起きた出来事の真因・背景などを把握していきます。
顧客の言葉や文脈から感情を読み取り、理解することも大切です。顧客が抱いている感情や持っている価値観、ライフスタイルなどを理解することで、顧客が求めているものがわかります。その結果、どういう対応や施策・戦略が必要になるのかが見えてくるでしょう。
分析結果を業務に活かす
分析が終わったら、業務に取り入れていくことが大切です。業務に反映させていくためには、社内で情報共有を図る必要があります。報告書やプレゼンテーションなどによって、社内全体にVOCの分析結果や活用方法・方針を的確に共有しておきましょう。そうすることで、VOCに基づいた意思決定や改善策の実施が可能になります。
VOCは部署内の活動だけではなく、企業自体の取り組みや思想にも影響を与えます。VOC分析によって優先順位を決め、必要な部署の業務に取り入れることで、はじめてVOCが活かされることになるのです。今後、幅広い課題を発見できるように、分析部署の設置や収集・分析に役立つシステムを導入するなどして、VOCを有効活用する体制を構築していきましょう。
顧客対応ツールを活用した効率的なVOC活動を
顧客のニーズが多様化している現代において、商品やサービスに直接触れるユーザーからのVOCは、貴重な情報源です。VOCを収集し、効率よく分析することで、商品やサービスの品質向上につながります。一方で、VOCの活用には手間とコストがかかります。VOCを効果的に活用するためには、VOCに求める目的を明確にし、適切な運用体制を構築する必要があります。
弊社では、FAQシステム(FAQツール)「Helpfeel(ヘルプフィール)」を提供しています。Helpfeelは、VOCの管理にもご活用いただけます。
前述の通り、VOCの活用には、適切なVOC収集の仕組みづくりと、分析工数の捻出が重要です。ただし、多くのコールセンターでは、日々の業務が忙しく、顧客対応のデータを一元管理したり、分析時間を確保したりすることが難しいという課題に直面しています。
Helpfeelを使ったFAQサイトでは、ユーザーにサイト上での自己解決を促すことで、コールセンターの負担軽減につながるのみならず、ユーザーの検索行動を分析できます。VOCを効率的に収集することで、コールセンターがサービス改善に回す時間を確保することに役立ちます。
例えば、株式会社リクルートが展開する「Airレジ」では、Helpfeelを導入したことで検索結果のクリック率が向上し、問い合わせ率が低下。ユーザー数が増える中でも、ヘルプデスクの規模を変えないサポートの提供が可能になりました。
また、Helpfeelではユーザーが検索するキーワードや、見られているページを分析できます。その結果からユーザーの傾向を捉えて、定期的なFAQサイトの改善につなげています。
FAQシステムを活用したVOCの収集・分析に興味をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。