ACW(平均後処理時間)とは?
ここでは、ACWについて以下の4点から解説していきます。
- 平均後処理時間とは
- ACWが注目されている背景
- ATT・AHTとの違い
- 平均後処理時間の計算方法・標準値
施策を検討するために、ACWの意味や注目される背景、他の指標との違いなどを把握していきましょう。
平均後処理時間とは
ACWは「After Call Work」の略称で、日本語では「平均後処理時間」と訳されます。計測対象は、顧客との通話を終えてから、1件の後処理を完了するまでの時間です。
一般的なコールセンターでは、通常、顧客との通話を終えた後に、システムへの入力や注文手続きなど多くの作業が発生します。次の電話応対に素早く対応するには、通話1件あたりの作業にかかる時間を短くする必要があるでしょう。
ACWが長い場合は、後処理業務に非効率な部分があると捉えられます。逆にACWが短いならば、業務が効率的に進められていることが分かります。
ACWが注目されている背景
コールセンターでは、人手不足や離職率の高さといった課題を抱えている企業も少なくありません。このような問題を解決する手がかりとして、ACWが注目されています。
ACWを短縮することで、1件あたりの対応時間が減り、仕事の効率が上がります。効率がよくなれば、少ない人員でも対応できるようになるため、人手不足の解消につながります。また、後処理にかかる作業が簡略化されることで、オペレーターの業務負担も軽減され、離職率の改善も期待できます。
さらに、ACWを改善すれば、次の顧客への対応も迅速になり、待ち時間の短縮につながるため、顧客満足度の向上も期待できます。このように、ACWはコールセンターの効率やサービス品質を左右する重要な指標なのです。
ATT・AHTとの違い
ACWと混同されやすいものに、ATTとAHTがあります。それぞれの違いは、下記の通りです。
・ATT(平均通話時間):顧客との通話にかかった時間の平均
・AHT(平均処理時間):顧客の電話を受けて後処理を行い、次の電話を受けるまでの時間
ATTは、顧客に大きく左右される点がACWとの違いです。ACWは顧客の違いによる影響が小さいため、工夫次第で改善が見込めます。
なお、AHTは「ATT+ACW」で算出できます。AHTを改善するにはATTとACWのいずれか、もしくは両方の短縮が不可欠です。顧客に依存するATTよりも、オペレーター側の工夫で改善しやすいACWの短縮が特に注目されています。
▼以下の記事にて、ATTやAHTを始めとした、コールセンター業務で大切な指標を詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
平均後処理時間の計算方法・標準値
ACWを求める計算式は、以下の通りです。
- ACW=後処理時間の合計÷対応件数
例えば、対応件数が100件で、後処理時間の合計が100分であれば、ACWは1分となります。
コールセンター業界の平均後処理時間の標準値は5〜7分程度です。ACWが5分を超えるならば改善の余地があるといえるでしょう。
ACWをたった1分短縮するだけでも、オペレーター1人あたり1日100分の効率化が可能です。これをチーム単位で見ると、大幅な生産性向上や人手不足の解消につながるため、ACWの改善は非常に重要です。
ACWの重要性
ACWは、顧客の満足度やコールセンターの業務効率に影響を与える重要な指標です。ACWを把握して処理を短縮すれば、顧客満足度や生産性の向上を目指せるでしょう。
ACWは、以下の3つの観点から重要視されています。
- 顧客満足度の向上
- 生産性の向上
- コスト削減
ここでは、それぞれの重要性について詳しく紹介します。
顧客満足度の向上
ACWが短くなれば顧客の待機時間が減り、ストレスの原因が取り除かれるため、顧客満足度の向上が期待できます。
電話をかけた際に長く待たされるのは、顧客にとって大きなストレスにつながりかねません。顧客の貴重な時間を奪うことは、企業への不信感を抱かせたり、商品やサービスへのマイナスイメージにつながるリスクもあります。
ACWを短縮して顧客からの問い合わせに迅速な対応ができれば、顧客を待たせる時間が短縮され、結果として満足度の向上につながるでしょう。
生産性の向上
ACWの短縮は、コールセンター全体の生産性を向上させます。ACWが短くなれば、同じ時間でオペレーターが問い合わせに対応できる件数が増えるためです。
たとえば、1件あたりの後処理時間が短縮されれば、勤務時間内により多くの電話対応が可能になります。その結果、オペレーター1人あたりの対応件数が増加し、チーム全体の対応能力も向上します。
効率的な業務運営が実現することで、顧客対応のスピードも速まり、サービス品質の向上にもつながるでしょう。
コスト削減
ACWを短縮すれば、1人のオペレーターが対応できる件数が増加します。その結果、少ない人員でも業務を効率的に運営できるようになり、人件費の削減につながります。
コールセンターの運営において、負担が大きくなりやすいコストの1つが人件費です。人件費には、給与だけでなく、採用活動や新人育成にかかるコストも含まれます。
また、コールセンターの規模が拡大するほど必要な人員も増え、それに伴って人件費も膨らんでいく傾向にあります。
そのため、コールセンター運営におけるコスト削減を図るには、ACWの短縮に取り組むことが効果的です。
ACWに時間がかかる原因
ACWが長くなる原因は、主に以下の4点です。
- マニュアル・社内FAQが整っていない
- 通話内容が複雑で入力項目が多い
- オペレーターのスキルに個人差がある
- 心理的負担やストレスによる処理の遅れ
ACWを短縮し、効率的なコールセンター運営を実現するためにも、個々の原因を把握していきましょう。
マニュアル・社内FAQが整っていない
マニュアルや社内FAQが整備されていないと、業務中に分からないことがあった際、都度管理者に確認する必要があり、ACWが長くなりがちです。オペレーターが自分で問題を解決できない環境では、後処理に時間がかかってしまいます。
一方で、マニュアルやFAQが充実していれば、経験の浅いオペレーターでも自分で対応方法を確認でき、スムーズに作業を進められます。その結果、後処理にかかる時間が短縮され、ACWの改善が期待できます。
また、自力で問題を解決できるようになることで、オペレーターの自信や業務へのモチベーション向上にもつながるでしょう。
通話内容が複雑で入力項目が多い
コールセンターでは、通話内容が複雑なために入力項目が多くなり、後処理作業に時間がかかるケースがあります。複雑な通話内容を入力するには、ミスを避けるために慎重に作業しなければなりません。
丁寧に作業を進めると時間がかかり、結果的にACWが長くなりがちです。また、入力する項目数が多い場合も、1件あたりの入力に時間がかかるでしょう。
たとえ複雑な内容の問い合わせが多い場合でも、迅速に処理できるような対策が必要です。規定の入力項目数が多い場合は、本当にすべての項目が必要なのかどうか、入力の自動化や簡略化ができないかなどを見直してみてください。
入力に手間がかかる原因を取り除かなければ、作業効率の悪い状態が続いてしまいます。
オペレーターのスキルに個人差がある
オペレーターにはスキルや経験に個人差があるため、ACWにもばらつきが生じることがあります。熟練したオペレーターであれば後処理を効率的に進められますが、経験の浅いオペレーターが多い場合は処理時間が長くなりがちです。
個人のスキル差が大きい状態では、コールセンター全体の生産性が低下する可能性があります。一定の業務品質を維持するために、スキルの高いオペレーターがフォローに回ることもありますが、対応できる範囲には限界があるでしょう。
特に、教育体制やマニュアルが十分に整備されていない現場では、こうしたスキルの差が顕著に現れます。安定した業務運営を実現するためには、オペレーター全体のスキル底上げに向けた研修制度の強化や業務マニュアルの充実が不可欠です。
心理的負担やストレスによる処理の遅れ
オペレーターの心理的負担やストレスにより処理が遅れ、ACWが長くなるケースもあります。コールセンター業務では、クレーム対応を含む多様な顧客対応が求められ、常に高い集中力と迅速な判断が必要です。
そのため、精神的な緊張状態が続きやすく、後処理に影響が出ることも少なくありません。特にクレーム対応では、顧客からの厳しい言葉や暴言により、強いストレスを感じるオペレーターも多くいます。
精神的な不調は業務効率の低下につながりかねないため、適切な対策を講じる必要があるでしょう。心理的ストレスはACWの悪化要因となるため、コールセンター運営における重要な課題の1つといえます。
オペレーターが安心して業務に取り組めるよう、ストレスケアの体制整備やメンタルヘルス支援の導入を検討することが、業務効率改善のためには欠かせません。
ACWを短縮する方法
ACWを短縮するには、以下の4つの方法が効果的です。
- 入力システムを導入・改修する
- 業務フローを見直して効率化する
- オペレーター向けの研修を実施する
- FAQ・ナレッジベースの整備で後処理を効率化する
どのような解決策を導入するか検討するためにも、詳しく把握していきましょう。
入力システムを導入・改修する
入力システムの導入・改修をすることで、後処理業務の効率化を実現できます。コールセンターで導入が進んでいるシステムは、以下の2つです。
- CRM(顧客管理システム):顧客情報を一元管理でき、オペレーターが迅速に顧客データにアクセスできる
- CTI(Computer Telephony Integration):コンピュータと電話・ファクスを統合できる
CRMとCTIを導入・連携すれば、後処理業務が効率化されます。たとえば、発着信履歴の自動記録や音声解析AIを搭載したCTIによる通話内容の自動文字起こし・要約が可能です。
また、システムを導入する場合には、オペレーターにとって使いやすいCRMを選ぶことも大切です。既存システムの操作性に問題がある場合は、業務フローに合わせてシステムの見直しや改修を検討しましょう。
▼CRMやCTIの活用など、コールセンターのDX化が求められる昨今。DX化を推進させるためのポイントや課題、おすすめシステムまで徹底解説したお役立ち資料もご用意しています。ぜひ併せてご活用ください。

業務フローを見直して効率化する
業務フローを見直せばスムーズに後処理を進められるようになり、業務効率化を実現できます。業務内容が煩雑であれば、オペレーターのスキルに関わらずACWは長くなってしまいます。その場合、業務フローに問題がないか見直し、改善を図りましょう。
例えば、入力項目が多い場合は不要な項目がないかチェックしたり、重複している作業があれば削除したりすることで、無駄を排除できます。
定期的に業務フローを見直して無駄を省き、最適化していくことが大切です。作業を効率化できれば、確実にACWを短縮できるでしょう。
オペレーター向けの研修を実施する
オペレーターに対して適切な研修を実施することで、業務処理の精度とスピードが向上し、ACWの短縮が期待できます。特に、新人や経験の浅いオペレーターが多い現場では、研修による効果が顕著に現れます。
たとえば、システム操作に時間を要しているケースでは、操作に特化した実践的な研修を導入することで、効率的にスキルを習得させることが可能です。
現場で不足しているスキルに応じた研修を計画的に実施することで、オペレーター全体のスキルを底上げし、後処理にかかる時間を効果的に削減できるでしょう。
FAQ・ナレッジベースの整備で後処理を効率化する
FAQ・ナレッジベースの整備も、後処理業務の効率化につながります。業務上で問題があった場合にオペレーターが必要に応じて検索・参照できるシステムがあれば、上司や管理者に都度質問することなく自己解決が可能です。
FAQ・ナレッジベースが整備されていれば、業務上の重要なノウハウも共有できるでしょう。新人オペレーターでも熟練者のノウハウを簡単に学んで実践できるようになるため、業務の効率化を期待できます。
整備するには、FAQやナレッジの共有・検索がスムーズにできるシステムの導入が不可欠です。様々なシステムを比較検討した上で、自社のコールセンターに適したシステムを選びましょう。
▼コールセンターの質を向上しつつ、業務効率も改善したい。そんな課題をFAQで解決するための実践ノウハウをまとめた資料をご用意しました。ぜひ併せてご覧ください。

ACWの短縮には「Helpfeel」がおすすめ
コールセンターのACWの短縮には、社内ナレッジ検索ツールとして「Helpfeel」の導入がおすすめです。
Helpfeelは高い検索性に優れたナレッジシステムで、検索文に対して適切な回答候補を提示する機能が搭載されています。オペレーターは必要に応じて検索すれば、問題解決のための情報に素早くアクセスできるため、ACWの短縮が可能です。
Helpfeelのようなナレッジを簡単に検索管理できる仕組みを導入することで、オペレーターの経験に関わらず、誰もが一定の水準で後処理を行えるようになります。結果として、業務品質の差が縮まり、記録品質も安定します。
さらにHelpfeelを活用し、業務が効率化されることで、オペレーターの待機時間が減り、より多くの問い合わせに対応できるようになるでしょう。顧客の待ち時間短縮にもつながり、顧客満足度の向上にも大きく寄与します。
ACWを効果的に短縮し、コールセンター全体のパフォーマンスを向上させるために、ぜひHelpfeelの導入を検討してみてください。
ACWを短縮してコールセンターの生産性を高めましょう
ACW(平均後処理時間)が長くなると、オペレーターが対応できる件数が減るため、コールセンターの生産性は低下します。ACWを短縮するには、原因を特定して改善のための施策に取り組むのが重要です。
ACWが長くなる原因には、マニュアル・社内FAQの未整備、オペレーターのスキル差、通話内容の複雑さ、そして心理的負担やストレスなどが挙げられます。これらの原因に対して、オペレーターへの研修の実施や、FAQ・ナレッジベースの整備、業務フローの見直しといった方法が効果的です。
ACWが短縮され、業務の効率化が実現できれば、オペレーターはより多くの顧客に迅速に対応できるようになります。結果として、顧客満足度や生産性の向上、コスト削減などの効果が期待できるでしょう。
コールセンターの運営をより盤石なものにするためにも、ACWの短縮に取り組んでみてください。